十吾で御座る
新年を迎え、はや一月も半ば
冬の寒さが色濃く感じるようになって参りました
寒さ厳しい冬に、俳句の名人はどのような句を詠まれたのか、
ともに学びましょうぞ!
“夢に舞ふ能美しや冬籠”松本たかし
明治から昭和にかけて活躍された俳人
松本たかし殿、
この句は
「冬の日、家に籠ってみた夢の中で、美しい能を舞っている」という意味。
冬は屋敷に閉じ籠りがちで、変わり映えしない景色が多いからこそ、夢にこそ広がりがある
心躍る一句で御座りまするな
“いくたびも雪の深さを尋ねけり”正岡子規
これは正岡子規殿の有名な一句
子規殿は病に伏せることが長く続き、その中で詠んだ「雪がどのくらい積もっているか、何度も尋ねてしまった」という意味の句、
雪の様子を外へ見に行くこともままならないもどかしさ、その中に雪が降ることに心躍らせる、童のような思いが感じられまする
名人の句と聞くと、どこか高尚なものに聞こえてしまいますが、それだけではない、
日頃の些細な事を詠んだ句も残っておりまするぞ
“手袋の左ばかりになりにける”正岡子規
同じく正岡子規殿の一句
「片方の手袋だけよくなくしてしまい、左手の手袋ばかりになった」という意味、
これは、皆様にも心当たりがござりませぬか?
すぐに無くしたことに気づけばまだしも、一年を経て無くしたことに気づく、なんて事も往々にして御座りましょうな
有名な俳人の方々も、我らと同じような事を感じていると思うと、親しみが湧くもので御座りまする
“化物の正体見たり枯尾花”横井也有
江戸期の俳人、
横井也有(やゆう)殿
「枯尾花」とは“すすき”のこと。
「冬の野原のあやかし、正体はすすきであった」とは、笑いを誘う一句ですな
“化物の正体見たり”とは、随分と大仰な言の葉故、そこで心を引き、その正体、“枯尾花”で転げ落ちるような心持ちになりましたな
此度拙者が学びし名人の句は以上!
冬には気が滅入ることが多く御座りまするが、それでも楽しい心持ちになるような句も数多御座るのですな!やはり名人、見事で御座った!
ここで、十吾が一句
かじかみし
指先隠す
鼓の音
寒くて指がかじかんでしまう、
しかし握った撥の上げ下げ、太鼓の音と震えを前にすれば、かじかみも気にならないもので御座る!
此度はこれまで、最後までご覧いただき、有難う御座りました!
コメント